犬が首をかしげるのはなぜ?理由と注意したいケースを解説
犬の首をかしげるしぐさ、かわいいですよね。きょとんとした顔に癒される飼い主さんも多いのではないでしょうか。
犬が首をかしげるのは何かを不思議がっているわけではありません。今回は犬が首をかしげる理由や、注意が必要なケースについて解説します。
音を聞こうとしている
犬にとって気になる音がしたとき、首をかしげて聞こうとします。特に音源の場所がわからないとき、初めて聞く音や声がしたときに見られるしぐさです。
首を左右にかしげると、耳の位置や角度が変わります。こうすることで、どこから音が聞こえてくるのか、何の音なのかを確かめているのです。
人間には聞こえない音にも反応するため、飼い主さんにとっては唐突に首をかしげたように見える場合もあります。
首をかしげるしぐさは、次のような場合によく見られます。
・外から聞こえる小さな音に反応する
どこかで吠えている他の犬の声、近所の猫が庭を歩く音、風に揺れる木々の音。人間が気付かないような、かすかな音にも犬は反応します。
・サイレンなどに反応する
消防車や救急車のサイレンが遠くから聞こえると、音の方向を確かめようと首をかしげます。首をかしげたあと、遠吠えをする犬もいるかもしれません。
・地中に何かがいるとき
散歩中、地面のにおいをしきりに嗅いで首をかしげる場合は、地中の動物の気配を感じています。モグラなどがいるのかもしれません。
・飼い主さんの声がいつもと違う
急に甲高い声で話したり、風邪で声が変わったりすると犬は「いつもと違うぞ」と一生懸命聞き取ろうとします。
・聞きなれない言葉をかけられた
飼い主さんから、初めて聞く言葉をかけられるときも首をかしげる犬がいます。いつもは「お手」「おすわり」だったのに突然「ハウス!」と言われると、「あれ?なんて言っているのかな?」と聞き取ろうとするのです。
飼い主さんを喜ばせたい
飼い主さんを喜ばせたくて、首をかしげる犬もいます。首をかしげると飼い主さんが笑顔で喜ぶのを何度か経験し、学習した結果だと考えられます。
犬に飼い主さんの表情が見分けられるの?と疑問に思うかもしれません。実は、「犬が、飼い主さんの表情を見分けることができるか」を調査した実験があります。
笑顔と無表情の飼い主さんの写真提示したところ、多くの犬が笑顔の写真の前に立ったという結果が得られました。さらに、犬の知らない人の笑顔と無表情の写真での実験でも、笑顔を選択したそうです。
この実験では「笑顔=うれしい」といった概念の形成までは明らかにしていません。しかし、飼い主さんが笑顔なら尻尾をふったり、怒った顔をしていれば心配そうに見つめてきたり、しませんか?もしかしたら「笑顔の飼い主さんは、うれしいんだ」とわかっているかもしれませんね。
首をかしげて一生懸命コミュニケーションを取ろうとする犬、いとおしくなりますね。
病気の可能性も
犬のかわいい首をかしげるしぐさですが、病気が原因の場合もあります。突然首をかしげるようになった、いつも同じ方向にかしげている場合は、急いで動物病院を受診しましょう。
前庭神経の病気
前庭神経になんらかの異常が生じると、さまざまな症状が現れます。首をかしげるのも症状の1つです。
では前庭神経はどこにあるのでしょう?犬の耳の奥、「内耳」には聴覚にかかわる「蝸牛(かぎゅう)神経」、平衡感覚にかかわる「三半規管」があります。三半規管は前庭神経につながっているため、前庭神経に炎症が起こると犬は体のバランスが保てなくなるのです。
症状
前庭神経に異常が起こると、次のような症状が見られます。
・いつも首をかしげている
何かを聞こうとするのではなく、同じ方向にかしげているのが特徴です。かしげている方向の耳に疾患が起きています。
・吐き気、嘔吐や食欲不振になる
乗り物酔いのようになるため、よだれが出て、吐き気が起きたり、嘔吐したりします。食欲が低下する犬もいます。
・まっすぐ歩けない
バランスが取りにくく、ふらふらになります。まっすぐ歩けません。
・壁にもたれている
うまく歩けないため、壁にずっともたれたままになる場合もあります。
・同じ方向に円を描くように歩く
炎症を起こしている耳を中心に、ぐるぐると同じ方向に回ります。
・つまずいたりよろめいたりする
なんでもない場所でつまずいたり、よろめいたりします。
・目が左右に揺れている
目が細かく左右に動くのは、眼振という症状です。
・ごろごろ転がる
歩けなくなると、床にごろごろと転がってしまいます。
突然症状が起きる場合も多いようです。飼い主さんはパニックにならないように落ち着いて行動してください。紹介した症状以外でも、「いつもと違う」と思ったら動物病院を受診しましょう。
原因はわからない場合も
原因はさまざま。中には不明のまま治ってしまうケースもあります。
・原因不明
はっきりした原因がわからないケースが多いようです。天気や気圧の変化、ストレスなども原因ではないかと言われています。高齢の犬に多いため、老化も一因かもしれません。原因不明の場合は対処療法などで、10日前後で治まることがほとんどです。
・細菌感染
中耳炎や外耳炎など耳の感染症が原因で、前庭まで炎症が広がると生じます。頭を振ったり耳をかゆがったりしている場合は、中耳炎や外耳炎になっているかもしれません。
・頭のケガ
事故で頭を強く打ったなども原因になる場合があります。
・耳や脳の腫瘍
耳や脳の前庭神経周囲にできた腫瘍も原因です。
・抗生物質
特定の抗生物質を服用して発症する例もあります。
いずれの場合も、動物病院を受診して獣医師の指示に従いましょう。
まとめ
犬が首をかしげるしぐさ、表情はかわいくて癒されますよね。犬は首をかしげて耳の位置を調節し、音を一生懸命聞き取っています。飼い主さんがかわいいとほめてくれるのがうれしくて、首をかしげる犬もいるようです。
しかし、いつも同じ方向に首をかしげている場合は前庭神経に炎症が起きているかもしれません。他にも食欲がない、よだれをたらす、ふらつくなどが見られたら急いで動物病院を受診してください。