ワンちゃんの市販のドッグフードの成分表示の見方をマスターしよう
今回は2回に分けてワンちゃんのフードについて詳しくみていきます。前編の今回はドッグフードの原材料と成分表を中心に見方を解説し、選び方の一助となるようまず基礎知識を丁寧に説明していきたいと思います。
後編ではワンちゃんのライフステージやダイエットができたら、などそれぞれのワンちゃんにあわせたフード選びの観点からといったように、お悩みにアプローチできるよう前編の内容を踏まえて、より深く成分表示の見方だけでなく、選び方のポイントについて解説していきます。
愛犬、ワンちゃんにぴったりのフードを選んで、ワンちゃんの健康をしっかり守ってあげてくださいね。
パッケージをチェック、しかし表示が法律で定めのない成分表示もあることに注意
原材料や成分表は、たいてい商品のパッケージ裏面などでチェックすることができます。ペットフード安全法やペットフード公正競争規約に基づいてそれらを表示することが一般的なのです。ドッグフード及びペットフードについては環境省、ペットフード公正取引協議会により以下のように表示が定められています。定められているのは、①ペットフードの名称、②原材料名、③賞味期限、④事業者名及び住所、及び⑥原産国名です。以下はペットフード安全法では取り決められていませんがペットフード公正競争規約では定められています。⑥ペットフードの目的、⑦内容量、⑧給与法、及び⑨成分についてです。
後者の規約については法律でないため遵守する必要はありませんが、多くのペットフード製造、輸入、販売会社が表示をしています。
原材料と成分、違いと表示から分かること
ワンちゃんのフードをを選ぶ際、記載を確認したいのは特に原材料と成分についてになります。では原材料と成分とは何が違うのか確認していきましょう。原材料の見方について
まず原材料についてです。原材料の記載方法や内容についての見方を順番に確かめていきましょう。1.原材料は多い順に記載されている
原材料の記載はその内容が多い順と公正競争規約で「原材料に占める重量の割合の多い順に記載すること」という表記で定められています。ですが、表示スペースの大きさなども鑑みて添加物以外の原材料については分類名(肉類、魚介類、野菜類等)での表示も可能とされています。例えばニンジンなどが少量原材料として含まれている際もニンジンの表記はなく、また野菜類としてトータルで他の原材料より内容量が多い場合、順序が前後して表示されることもあり得ることを覚えておきましょう。
2.『〇〇ミール』に注意しよう
ドッグフードの原材料として見かける機会も多い『◯◯ミール』とはどういったものになるのかここで確認しましょう。ミールとは、「レンダリングミートミール」のことを一般的にさします。このレンダリングミートミールとは、ひとの食品では使用しない骨周辺の肉や脂身、皮筋などを集めて高温、高圧下のもと新たに加工し残渣(ざんさ)を乾燥させて粉砕、粉状にした「肉粉」や「魚粉」とよばれる素材をいいます。
なぜこのミールをドッグフードに利用するかというと、まずタンパク質含有率が高いことがあげられます。また何より栄養成分値にむらの少ないフードを安価に製造できるメーカー側のメリットが大きいことでしょう。
ですので残渣の品質についてはこだわられない場合が多いのが事実です。
高温の熱によって、また乾燥工程も加わることで、生肉に比べタンパク質変性はだいぶ進んだものとなっています。
このようなことからワンちゃんのフードにはこれらの成分が少ないもの、また入っていてもその性質が良質なものを選択してあげたいですね。
フードに使用されるこのミールは、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)によって原材料の調達の仕方などに一定の基準が設けられています。
3.添加物は必ずしも悪ではないが内容を吟味しよう
添加物というと決していいものというイメージはありませんが「栄養バランスの調整」のために使用されるビタミン、ミネラル類も添加物に分類されることを確認しましょう。これらは「栄養添加物」と呼ばれます。
ドッグフードの特に総合栄養食には、肉、魚、野菜等の主要原材料のみでは必要な栄養基準をクリアすることは難しく、そこで栄養添加物はワンちゃんの健康のために大切な添加物となっていると言えるでしょう。
ただし、やはり品質保持のため、美味しくワンちゃんの食べっぷりをよくするため、そういった添加物については注意も必要です。
品筆保持のための添加物として酸化防止剤があげられます。ワンちゃんの嘔吐や下痢の原因となる油の酸化を防ぐ役割を持っています。酸化防止剤には、合成酸化防止剤である「BHA」「BHT」「エトキシキン」や、自然由来の「ローズマリー抽出物」「ミックストコフェロール」があります。
合成酸化防止剤の中には、過剰摂取により発がん性が疑われる成分もあります。フードに使用される合成酸化防止剤は安全性を鑑みてその含有量が定められていますので、即時的な危険性はないとはいえます。ですが自然由来の「ローズマリー抽出物」や「ミックストコフェロール」に酸化防止剤の役割を担わせたフードを選ぶのがワンちゃんにとってより安心かもしれません。
原材料からわかること
ここで原材料から判断できる愛犬、ワンちゃんとフードの相性について考えてみましょう。まず品質や安全性については原材料表示から判断できることがわかりました。ミールの含有の有り無しやその量、また添加物の種類などですね。
ワンちゃんの嗜好に合っているかもわかります。例えばお魚の成分やにおいが好きなワンちゃんはそれら成分が多く含有されるものを選んであげるとよいでしょう。
またアレルギー食材の有り無しの判断もできます。ただし、魚介類などで分類されてしまっている場合はメーカー側に直接問い合わせる必要があります。
原材料とその配分からある程度ダイエット向きかどうかなども検討できますね。ワンちゃんの悩み(口臭など)に対応しているかもわかることがあるでしょう。
これらについては後編の次回で数あるワンちゃんのフードの選び方のポイントについてご説明をしていきます。
成分とは原材料と何が違うのか
成分とは栄養素の観点からその含有量を記載する項目になります。ワンちゃんの5大栄養素として公正競争規約では、「タンパク質」「脂質」「粗繊維」「灰分」「水分」の表示をルールとして定めています。それらをパーセンテージで表したものが成分表示です。「灰分」といった聞き慣れない言葉や「水分」が栄養素の一つになるのかと疑問もわくかと思います。一つ一つ、その内容について確認していきましょう。①タンパク質
タンパク質はワンちゃんの体のメインともいえる構成要素です。特に子犬の成長期には成犬のワンちゃん以上のタンパク質が求められ、いわゆる幼犬用や成長期をサポートする総合栄養食にはタンパク質の含有量が多く配合されたフードが市販されています。成長や発達だけでなく、タンパク質は体組織の修復、消化酵素、免疫系のすべてに関わってくる重要な栄養素です。タンパク質を構成しているアミノ酸は20種類あり、体内で作ることが出来ない「必須アミノ酸」と体内で生成可能な「非必須アミノ酸」に分けられます。
ワンちゃんにとって必要な必須アミノ酸は10種類あり、これらは食事から摂取する必要があります。これら必須アミノ酸がバランスよくフードに含まれていることが大切で、必須アミノ酸がバランスよく含まれるフードを「アミノ酸スコア」が高い、と表現します。
アミノ酸スコアについては詳細は省きますが最大値100とし、アミノ酸の量やバランスから細かく算出する方法でひとの栄養素でも使われているスコアです。
高タンパクなフードは、免疫力を高め、丈夫な体づくりに最適です。ただし、腎臓や肝臓の調子がよくないワンちゃんやアレルギー体質のワンちゃんの場合は、ある程度控えたほうがよいこともあります。
②脂質
脂質の主な役割は、タンパク質や炭水化物に比べても倍以上のカロリーを供給するエネルギー源になるほか、脂溶性ビタミンの吸収を助け、皮膚や被毛の健康を促進し、細胞膜や血液、神経組織や筋肉の成分となるといった大切な働きを担っています。また、必須脂肪酸(オメガ3・6)を含んでいます。これらは特に皮膚の健康を保持するために大切な成分です。
また、脂質が増えると味や匂い、食感といった面での嗜好性が高まるため、ワンちゃんがよりよく食べることが期待ができます。
脂質は、脂肪酸と呼ばれる成分で構成されており、脂肪酸の中には、ワンちゃん自らの体内で合成することができない、または体内合成だけでは足りずフードから摂取する必要があるものがあり、これらは必須脂肪酸と呼ばれます。ワンちゃんの必須脂肪酸には、リノール酸、α-リノレン酸、DHA、EPAなどがあります。
脂質は主に肉や魚に含まれますが、乳製品などの動物性脂肪や、また大豆などの脂質を多く含む植物性由来の原材料からも摂取することができます。
③粗繊維
粗繊維とはこちらも聞き慣れないかもしれませんが、「炭水化物」に含まれる食物繊維の一種のことで、水に溶けない不溶性食物繊維をさします。役割としては水分を保持して膨らみ、腸を刺激するほか、便を増やして、便の形を良くすることでスムーズな排便をサポートしてくれます。
また満腹感を保つことができるため、肥満用フードなどで繊維質を増量しているフードもあります。
④灰分
灰分というとまた何を指すのかと考えてしまいますが、主にミネラルのことをいいます。ミネラルには、カルシウム、鉄、ナトリウム、マグネシウム、リン、カリウム、また亜鉛などがあります。
想像しやすいのは骨や歯を作ったり維持する成分としてですが、筋肉の収縮や弛緩、また神経の情報伝達などワンちゃんが生きていくうえでこちらも必要不可欠な栄養素です。ただし偏ったミネラルの与えすぎは、他のミネラル成分の働きを阻害することもあり、摂取にはバランスが重要になります。
灰分の中のミネラルの構成は表示が義務づけられていませんが、ウェブサイト上で詳細を公開している場合もあります。またもしくはメーカーに直接問い合わせることもできます。
⑤水分
ワンちゃんの体のおよそ60〜70%は水分でできています。栄養素としての働きはありませんが、生命を維持するために水分は重要な成分で次のような役割があります。
- 血液や唾液、涙などの体液をつくる
- 体温調節
- 食べ物の消化・栄養の運搬
- 老廃物の運搬・排出
ドライフードにも実は水分は含まれていますが、それだけでおよそ必要量を摂取することはできないため、ワンちゃんには新鮮な水をいつでも飲みやすい環境で接種できるようにしたいものです。もちろんウェットフードを与える際も同様です。ワンちゃんがお水を飲まないときの対策としては過去記事のこちらを参照してください。
「ワンちゃんの水分補給は夏も冬も大切!飲まないときの工夫も解説」
少し難しくなりますが、1日に必要な水分量の計算方法について記載します。
1日に必要な水分量計算式…体重の0.75乗×132
例)体重5kgの場合 5×5×5=125√√×132=441
ひとも1日2リットルの水分をなどといいますが、ワンちゃんもまた多く水分を飲むことが望まれているのですね。
ひとも1日2リットルの水分をなどといいますが、ワンちゃんもまた多く水分を飲むことが望まれているのですね。
成分の記載パターンには2種類あることに注意
成分分析値について
まず1つ目に紹介するのが成分分析値という分析方法で、これはあるロットの栄養成分を分析した結果を表示したものです。
一点注意したいのが、この成分分析値には「現物ベース」と「乾物ベース」の2種類の表記がある点です。前者はフードをそのまま分析した水分値も含む分析、後者は水分を取り除いた状態でのフードを想定して計算した分析値になります。
ですのでワンちゃんのフードを比較検討する際は、このベースが同じでないと正確な比較にはなりません。
例えば、あるドライフードとウェットフードを比べる場合は、「現物ベース」で比較してしまうとウェットフードに水分が多いことから、一見他の栄養素がウェットフードの方は低く数値として出てしまいます。複数のフードを比較検討する際は、「乾物ベース」の数値をみるようにしましょう。
保証分析値について
保証分析値は、ある%以上、または以下で表示されます。
たんぱく質と脂質については、犬の健康維持のためにある一定量以上必要とされるため「〇〇%以上」と表示方法が定められています。
一方、繊維、灰分、水分は、多く含まれすぎると栄養低下につながることもあるため、「〇〇%以下」と表示されます。
保証分析値を見る際に注意したいのは、あくまで「〇〇%以上/以下であることを保証する」という意味であって、表示されている栄養成分値がぴったり含有されているわけではありません。
まとめ
今回はワンちゃんのフードの原材料、成分表示について解説しましたが、専門的な用語も多く少し難しい内容にもなったかもしれません。
原材料や成分の具体的な説明にはなりましたが、栄養学的観点も多く深堀していくと多くの学びが必要でもあります。
次回は、しかし今回の内容を踏まえてそれではうちのワンちゃんに最適なフードを選ぶ際にはどんなポイントや数値をチェックすればいいの?という疑問にお応えできる内容で、具体的なところがわかるよう丁寧に解説を続けていきたいと企画しています。
ぜひ今回の内容とあわせてお読みいただき、もしも今までワンちゃんのフード選びに自信が持てない、ワンちゃんに最適なフードをあげられているかわからないという飼い主の方にも参考になるものにしますので期待していてくださいね。